介護業界に対する財務省の見立て(意見)を確認しておきましょう
財務省としての意見を発信する「財政制度分科会」が開催
年度が変わり、いよいよ2027年度法改正に向けての各論議論が展開され始めようとしている2026年5月。そんな折、「持続可能な社会保障制度の構築」というテーマに基づき、財政制度分科会が4月28日に開催されました。
“国の金庫番"とも呼べる財務省が介護業界に対し、どのような改革案を突き付けているのか?今回は同省が作成した資料の中で特に介護事業者に関連するであろう論点の中から抜粋し、特に注視・認識しておいた方が良いと思われる10個の内容を採り上げ、お届けしてまいります。
財政制度分科会で採り上げられた、財務省から見た介護業界に対する見立て(意見)とは
では、早速、中身に移ってまいりましょう。
ここでは本分科会で示された資料から抜粋・紹介する形で進めてまいります。
先ずは、利用者負担の2割負担の範囲拡大についてです。(財務省の意見として認識しておいた方が宜しい箇所を太字・下線で強調しておりますのでご確認下さい)。
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〇 介護保険制度が2000年に創設されてから四半世紀が経過した。高齢者を社会全体で支え合うという役割を果たしてきた一方で、高齢化の進展により介護費用・保険料は大幅に増加しており、制度の持続可能性が危ぶまれる状況にある。
〇 今後、現役世代の保険料負担の増加を抑制しつつ、制度の持続可能性を確保するため、令和9年度介護報酬改定に当たり、高齢化・人口減少下での負担の公平化や、給付の効率化・適正化を実施すべき。特に、保険料が増加する一方で、利用者負担がほぼ横ばいで推移していることを踏まえると、負担能力に応じた負担の在り方について検討するべき。
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〇 介護保険の利用者負担については、2割・3割負担の導入を進めてきたが、今後も、高齢化による介護費用の増加が見込まれる中で、給付と負担のバランスを確保し、保険料の伸びの抑制を図る観点から、利用者負担の更なる見直しを進めていくことが必要。
〇 具体的には、負担能力に応じて、増加する介護費用をより公平に支え合う観点から、2割負担の対象者の拡大を図るべき。
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〇 利用者負担の2割負担の範囲拡大については、年収基準を引き下げ、配慮措置について、案1:負担増を当分の間、最大月0.7万円に抑える、案2:預貯金が一定額以下の者は、申請により1割負担に戻す、という案で検討を進めてきた。令和8年度予算の大臣折衝において「令和9年度の前までに結論を得る」とされたことに基づき、早急に結論を得て実施すべき。
〇 今回の範囲拡大の目安とされた年金収入230〜260万円という層は、介護サービスの利用者に占める割合としては限定的であり、現役時代の給与収入が730〜870万円だった、大企業の課長〜部長級まで昇進した層に相当し、こうした層は相応の金融資産を保有していることが多く、(2号保険料を負担する現役世代と比べても)一定の負担能力があると考えられる。
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〇 新たに2割負担になる際の負担増に関して、介護保険には、高額介護サービス費という、利用者負担額が上限(4.4万円/月)を超えた場合、超えた分を払い戻しする制度があるため、相対的に利用者負担が大きい施設介護の利用者(利用者負担は平均3.2万円/月)については、負担額が上限に達し、負担増額が抑えられる(負担増額は平均1.2万円/月)ことに留意が必要。
〇 医療保険と合わせた負担に関しては、高額医療介護合算サービス費という、医療・介護の利用者負担額が上限(56万円/年。月換算で4.7万円)を超えた場合、超えた分を払い戻しする制度があるため、負担額が高額介護サービス費の上限(4.4万円/月)に達しているような利用者については、追加で負担する医療保険の負担額は限定的であり、外来特例の見直し等の医療保険の給付と負担の見直しと合わせても、過度な負担増にはならないと考えられる。
〇 利用控えに対する懸念に関しては、過去、2割負担・3割負担導入による介護サービス利用への影響は限定的であり、一定以上の所得・資産のある利用者に対して、2割負担の範囲を一定程度拡大したとしても、介護サービスの利用控えに与える影響は限定的と考えられる。
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続いて、ケアマネジメントの利用者負担と給付の在り方についてです。
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〇 ケアマネジメントについては、利用者負担を求めてこなかったが、登録制の対象となる住宅型有料老人ホームの入居者に係る新たな相談支援の類型を設けた上で、利用者負担を導入することとしている(今国会に提出している「社会福祉法等の一部を改正する法律案」に規定)。住宅型有料老人ホームについては、ケアマネジメントの利用者負担の導入に関する、施設介護と在宅介護との不均衡や、ケアマネジメントの役割軽視が、特に問題となっており、確実に利用者負担を導入すべき。
〇 介護報酬は、利用者の要介護度が進むにつれて報酬が高くなる構造(注)だが、利用者のwell-beingや給付費抑制の観点からは、本来、要介護状態からの自立や、要介護度の改善を促進する構造にすべき。ケアマネジメントの報酬における自立・要介護度改善へのインセンティブ付けを検討すべき。
(注)例えば、ケアマネジメントの労働投入時間は、要支援1に対して要介護5は1.4倍だが、基本報酬は3.0倍となっている。
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続いて、補足給付の見直しについてです。
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〇 介護施設に入居する低所得者の食費・居住費を軽減する仕組みである「補足給付」については、2005年にそれまで介護給付とされてきた食費・居住費が給付の対象外となったところ、介護施設に低所得者が多くいることを踏まえ、経過的に設けられたもの。その後、預貯金要件の追加や、所得区分の設定の精緻化など、累次の見直しが実施されてきた。令和8・9年度においても、所得区分の設定の精緻化と負担限度額のバランスをとる措置を実施する。
〇 在宅で暮らす介護サービス利用者は、食費・居住費を全額自己負担していることを踏まえると、補足給付は公平性を欠く制度といえる。また、介護給付の対象外となった食費・居住費を軽減するという、低所得者対策としての側面が強い施策を、介護保険財源で実施し続けることは合理性を欠いており、引き続き見直しを実施するべき。
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続いて、老健施設等の多床室の室料負担の見直しについてです。
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〇 介護施設の費用については、2005年度に、食費と個室の居住費(室料+光熱水費)を介護保険給付の対象外とする見直しを実施(多床室は食費と光熱水費のみ給付対象外)。2015年度に、介護老人福祉施設(特養老人ホーム)の多床室の室料負担を基本サービス費から除く見直しを実施。
〇 しかし、介護老人保健施設・介護医療院の多床室については、室料相当分が介護保険給付の基本サービス費に含まれたままだった。2024年度介護報酬改定において見直しが行われたが、新たに室料負担が導入された対象施設は一部に限定。
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〇 介護医療院は、介護老人福祉施設(特養老人ホーム)と同様、家庭への復帰は限定的であり、利用者の「生活の場」となっている。
〇 介護老人保健施設は、施設の目的が「居宅における生活への復帰を目指すもの」とされ、少なくとも3か月毎に退所の可否を判断することとされているが、一般的な医療機関でも長期入院の基準が180日となっている中、介護老人保健施設の平均在所日数は400日を超えている状況。
〇 さらに、入所当初の利用目的が「他施設への入所待機」等という利用者が3割となっており、長期入所者の退所困難理由でも「特養の入所待ちをしている」が38%、「家族の希望」が25%となっている。
〇 こうした利用実態等を踏まえ、居宅と施設の公平性を確保する観点から、介護老人保健施設・介護医療院のうち、2024年度介護報酬改定において室料負担の導入が見送られた類型についても、多床室の室料相当額を基本サービス費等から除外する見直しを実施することが考えられる。
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続いて、令和9年度介護報酬改定に向けてについてです。
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〇 令和9年度介護報酬改定において、賃金・物価動向の変化に的確に対応する必要がある。
〇 賃金に関しては、令和9年度の定例改定を待たず、令和8年度に期中改定を行い、介護現場の生産性向上を促進しつつ、介護分野の職員の処遇改善を実施する措置を講じた。介護人材の確保と、保険料負担の抑制の両立に向けて、介護報酬による賃上げのみならず、介護現場が生産性向上に取り組み、対応可能な利用者が増え、収益が増加することで、職員の賃上げと、さらなる生産性向上投資につながる、という好循環を実現することが重要。
〇 介護サービスの利益率については、足元で、物価上昇の影響がある中でも、過去や他産業と比較して高い水準にあり、かつ、サービス類型ごとに大きな差がある状況。令和9年度改定においては、サービス類型や、サービス提供の実態に応じて、介護報酬を適正化する必要。
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続いて、介護現場の生産性向上(経営の協働化・大規模化)についてです。
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〇 介護現場の生産性向上に向けては、事業所ごとの介護テクノロジーの導入(前回の財審で詳述)に加えて、事業所間のデータ連携により、ケアプランのやりとりをオンラインで完結する仕組みである「ケアプランデータ連携システム」の導入や、複数の社会福祉法人が参画し、各法人の自主性を保ちながら経営を協働化する「社会福祉連携推進法人」の設立等による経営の協働化・大規模化を推進していくべき。
〇 こうした観点から、R7補正・R8改定における介護職員の賃上げの上乗せ措置について、訪問・通所系サービスでは、「ケアプランデータ連携システム」の導入か、「社会福祉連携推進法人」への所属が要件とされたところ。(注) このことを受けて、「ケアプランデータ連携システム」の導入割合が足元で顕著に上昇しており、職員の賃金の部分で生産性向上の取組をインセンティブ付けすることが効果的であることが示唆される。R9改定では、こうした取組の効果を踏まえて、さらなる生産性向上につながるよう、例えば、訪問・通所系サービスについて、介護記録ソフトなどの介護テクノロジーの導入も要件に追加するなど、要件の在り方を検討すべき。
(注)施設系サービスについては、介護テクノロジーの導入等が要件となっている「生産性向上推進体制加算」の取得か、「社会福祉連携推進法人」への所属が要件とされた。
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続いて、住宅型有料老人ホームにおける介護報酬の適正化についてです。
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〇 住宅型有料老人ホームにおいては、併設しているケアマネジメントや訪問介護の事業所によるサービス提供が行われるケースが多く、点在する利用者宅に個別に訪問する場合と比べて、一カ所で集中的にサービス提供ができるため、移動時間をはじめ、利用者1人当たりの労働投入時間が少ない。
〇 事業所と同一敷地内に居住する利用者にサービス提供する場合、「同一建物減算」が適用されるが、減算率は限定的(注)であり、住宅型有料老人ホームでサービスを提供する事業者は、利用者宅に訪問する事業者に比して、対労働投入時間で多く介護報酬を得ており、収支差率も良い傾向にある。(注)同一建物減算の減算率は、ケアマネジメントは▲5%、訪問介護は▲10〜15%。
〇 令和9年度介護報酬改定において、住宅型有料老人ホームにおいて提供されるケアマネジメント(新たな相談類型)・訪問介護について、点在する利用者宅に個別に訪問する場合との、サービス提供の実態の違い等を踏まえて、介護報酬を適正化すべき。
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続いて、インセンティブ交付金の在り方の見直しについてです。
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〇 インセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金・介護保険保険者努力支援交付金)は、市町村・都道府県の、平均要介護度の変化等のアウトカム指標等に応じて交付する、介護予防等の事業に活用できる交付金である。
〇 平均要介護度の変化等は、地域ごとの人口構造等の変化による部分も大きく、自治体の取組により改善するかは不透明であり、改善するとしても一定の期間を要すると考えられる。したがって、自治体が、交付額を増やすために介護予防に取り組むというインセンティブ構造が機能していないのではないか。
〇 また、インセンティブ交付金は、毎年交付額が異なるため、自治体にとって安定的な財源と見なすことができず、事業の拡充や新規事業にはほとんど活用されずに、その8割以上が第1号保険料の削減のために活用されており、交付金により介護予防に取り組むという好循環が生まれていない。
〇 したがって、インセンティブ交付金は縮小の上、自治体独自の取組を促進する役割を果たしている保険者機能強化推進交付金の「成果指向型配分枠」に重点化するなど、効果的な介護予防の推進と、保険者機能の発揮に資する見直しを実施すべき。
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続いて、軽度者に対する生活援助サービス等の地域支援事業への移行についてです。
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〇 要支援者に対する訪問介護・通所介護については、地域の実情に応じた多様な主体による効果的・効率的なサービス提供を行う観点から、地域支援事業へ移行(2018年3月末に移行完了)。
〇 今後も介護サービスの需要の大幅な増加が見込まれる中、生活援助型サービスをはじめ、全国一律の基準ではなく、人員配置や運営基準の緩和等を通じて、地域の実情に合わせた多様な人材や資源の活用を図り、必要なサービスを効率的に提供するための枠組みを構築する必要。
〇 介護の人材や財源に限りがある中で、要介護者の中でも専門的なサービスをより必要とする重度の方へ給付を重点化していくとともに、生活援助等は地域の実情に応じて効率的に提供していく必要。このため、軽度者(要介護1・2)に対する訪問介護・通所介護についても地域支援事業への移行を目指し、段階的に、生活援助型サービスをはじめ、地域の実情に合わせた多様な主体による効果的・効率的なサービス提供を可能にすることが考えられる。
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最後は、保険外サービスの活用についてです。
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〇 今後も増大し続ける多様な介護需要に対して、介護保険事業と介護保険外の民間企業による関連サービスで対応していくことが有益と考えられる。
〇 介護保険事業者が保険内と保険外のサービスを柔軟に組み合わせてサービス提供することは、高齢者の多様なニーズに応え、国民の利便性向上に資するだけでなく、事業者にとっても効率的なサービス提供や、収益の多様化、経営基盤の強化に資すると考えられ、職員の賃上げにも還元可能。
〇 現在、利用者保護や保険給付の適正な担保の観点から、サービスの明確な区分や説明責任の徹底といったルールを順守することで、介護事業者は保険内外のサービスを組み合わせて提供可能。しかし、介護事業者による保険外サービスの活用に当たっては、自治体によってルールの解釈が異なり、保険外サービスが認められないところもある(いわゆるローカルルール)、といった声も聞こえる。
〇 自治体のローカルルールの実態把握を行った上で、国民の利便性向上に資するよう、介護保険外サービスの柔軟な運用を認めるべき。
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国策の“風"を読み取り、早め早めの準備を
以上、財政制度分科会内の資料「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論II)」より、介護事業者に直接関係のある部分から抜粋してお伝えさせていただきました。
本内容は国全体の方針ではなく、あくまで「財務省」という一省庁の意見である、ということはしっかり認識しておく必要はあろうかと思いますが、それでも財務省の挙げる声には一定の重みがあることも否めない事実だと思われます。
事業者としては上記内容を踏まえつつ、「もしこれらの施策が実行された場合にどう対応するか?」について事前に頭を働かせておくことが重要だと言えるでしょう。
私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。
※引用元資料はこちら
↓
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/20260428zaiseia.html
(2026-05-28)


